

半導体組立とは?仕事内容や工程、年収、向いている人の特徴をご紹介
2025/09/24
スマートフォンから自動車、家電製品まで、現代社会のあらゆる電子機器に欠かせない半導体。その製造過程において、最終段階を担う半導体組立は、製品の品質と信頼性を左右する極めて重要な工程です。本記事では、半導体組立の仕事内容から具体的な作業工程、気になる年収相場、そして向いている人の特徴まで、詳しく解説していきます。
半導体組立とは製品完成までの最終工程を担う重要な仕事
半導体組立は、シリコンウェーハ上に形成された回路を実際に使用可能な製品へと変える後工程(バックエンドプロセス)を指します。前工程で作られた微細な回路を、最終的にIC(集積回路)やLSIとして市場に送り出すための不可欠な工程であり、製造プロセス全体の品質を決定づける重要な役割を担っています。
前工程と後工程の違いと組立工程の位置づけ
半導体製造は大きく前工程と後工程に分かれます。前工程(フロントエンド)では、シリコンウェーハ上にフォトリソグラフィやエッチング、イオン注入などの技術を駆使して、ナノメートル単位の微細な回路パターンを形成していきます。
一方、後工程である半導体組立では、前工程で作られたウェーハから個々のチップを切り出し、リードフレームや基板への実装、電気的な配線接続、樹脂による封止という一連の作業を経て、完成品へと仕上げていきます。
組立工程は「最終組立」や「パッケージング工程」とも呼ばれ、製品の外形を完成させ、機能を保証する最終段階として位置づけられています。どれほど高性能なチップが前工程で作られても、後工程での適切な処理なくしては製品として世に出すことはできません。
日本の半導体産業における組立工程の重要性
日本の半導体産業は1980年代に世界市場の過半数を占める隆盛期を迎えましたが、その後のグローバル競争の激化により、労働集約的な後工程の多くが海外へ移転しました。
しかし近年、経済安全保障の観点や先端パッケージング技術の重要性が再認識され、国内の後工程強化に向けた動きが活発化しています。2023年には「日本OSAT連合会」が設立され、業界横断での品質向上や人材育成への取り組みが始まりました。
特に注目されているのが、チップレット技術に代表される先端パッケージング分野です。微細化の物理的限界に近づく中、高度な組立技術による性能向上が期待されており、日本企業が得意とする精密加工技術や材料技術が強みを発揮できる領域となっています。
半導体組立の具体的な仕事内容と作業環境
半導体組立の現場では、高度に自動化された装置を操作・管理するマシンオペレーターとしての業務が中心となります。微細な製品を扱うため、極めて清浄な環境での作業が求められ、独特な勤務体系のもとで働くことになります。
マシンオペレーターとしての日常業務
半導体組立におけるマシンオペレーターの主な業務は、専用装置の操作と工程管理です。シフト開始時には、担当装置の状態確認から始まり、ウェーハやリードフレーム、金線などの材料を機械にセットし、製品に応じた設定プログラムを読み込みます。
装置が稼働を開始すると、モニターや操作盤を通じて動作状況を監視し、定期的に製品の状態を確認します。異常音やエラー表示などの不具合の兆候がないか、常に注意を払いながら作業を進めていきます。
工程の合間には、顕微鏡や拡大鏡を使用した目視検査や、テスターによる電気的特性の測定といった品質チェックを実施します。これらの検査で異常が発見された場合は、即座に装置を停止し、原因究明に取り組みます。
トラブル発生時には、マニュアルに従った初期対応を行い、解決困難な場合は上長への報告を徹底します。半導体組立の現場では、報告・連絡・相談の徹底が品質維持の要となっています。
クリーンルームでの作業環境と身だしなみ規定
半導体組立の作業は、空気中の塵埃を極限まで排除したクリーンルーム内で行われます。室温は年間を通じて約25℃、湿度50%程度に保たれ、陽圧管理により外部からの塵埃侵入を防いでいます。
作業者は入室時、低発塵性素材でできた全身つなぎの無塵服(クリーンスーツ)に着替え、頭髪を完全に覆うフード付き帽子、マスク、保護メガネ、手袋、専用シューズを着用します。
入室前にはエアシャワーで全身の微粒子を除去し、作業中も厳格な規定を守る必要があります。化粧品や香水、整髪料の使用は禁止され、ネイルアートや長い爪も認められません。
持ち込み品にも制限があり、紙や木材など発塵の恐れがあるものは原則持ち込めません。私物の携帯電話やハンカチさえ持ち込み禁止とする職場も存在します。
このような環境は一見窮屈に思えるかもしれませんが、清潔で快適な温度管理のもと、肉体的に汚れることなく働ける環境は、多くの作業者から好評を得ています。
交替制勤務のスケジュールと働き方
半導体工場では、製造装置を24時間稼働させるため、多くの現場で交替制勤務が採用されています。代表的な形態として、8時間×3交替制と12時間×2交替制があります。
8時間3交替では、早番(7:00-15:00)、遅番(15:00-23:00)、夜番(23:00-翌7:00)といったシフトで稼働し、12時間2交替では昼勤(8:00-20:00)と夜勤(20:00-翌8:00)で運営されます。
特徴的な勤務形態として、3勤3休や4勤4休といったサイクルを採用する工場もあります。連続勤務の後にまとまった休みが取れるため、プライベートの充実を図りやすいという利点があります。
ただし、夜勤を含む交替制勤務は生活リズムの調整が課題となります。体内時計の乱れから睡眠障害や疲労感に悩む作業者も少なくありません。
一方で、深夜労働には基本給の25%以上の割増賃金が支払われ、交替手当も支給されるため、収入面では日勤専属より有利になる傾向があります。
半導体組立の主要工程と機械化の現状
半導体組立には、ダイシング、ボンディング、モールド、最終検査という主要な工程があります。いずれも高度に自動化されており、オペレーターは装置の操作と品質管理を中心に業務を行います。
ダイシング工程でウェーハを個片化
ダイシング工程は、前工程で回路が形成されたシリコンウェーハを、個々のチップ(ダイ)に切り分ける作業です。直径数百ミリの円盤状ウェーハには、碁盤目状に多数のチップが配置されています。
切断には工業用ダイヤモンドブレードを備えたダイサーと呼ばれる自動切断装置を使用します。高速回転するブレードで精密に切断し、エッジの欠けやヒビを防ぐため、振動や応力を最小限に抑える制御が行われます。
近年では、レーザーを用いたステルスダイシングという技術も導入され、チップへのストレスをさらに軽減する工夫がなされています。
切断後は、切断面の仕上がり検査を行い、良品のみが次工程へ送られます。ダイシングは組立工程の第一歩であり、ここでのミスは後工程すべてに影響するため、慎重な作業が求められます。
ボンディング工程で電気的接続を実現
ボンディング工程は、ダイボンド(チップ実装)とワイヤーボンディング(配線接続)の2つのステップで構成されます。
ダイボンドでは、切り出したチップをパッケージの基板やリードフレームに接着剤やはんだペーストを用いて固定します。高性能品では、フリップチップ実装という方法も採用されています。
ワイヤーボンディングでは、直径20~30マイクロメートルの極細の金線やアルミ線を使用し、チップ上の接点パッドとリードフレーム上の接続パッドを熱圧着方式で接続します。
最新の装置では1秒間に数百本のワイヤーボンドを形成でき、多ピンのICでは数百本のワイヤーを正確に配線します。
接続位置のわずかなズレや接続強度の不足は製品不良につながるため、超音波振動や温度制御を駆使した精密な作業が行われ、サンプリングによる引っ張り強度テストも実施されます。
モールド工程による保護と封止
モールド工程では、ボンディングを終えたチップを外部環境から保護するため、エポキシ樹脂で封止します。一般的にはトランスファーモールド方式が採用されています。
チップが実装されたリードフレームを金型にセットし、高温の液状エポキシ樹脂を流し込んで硬化させることで、チップとボンディングワイヤ全体を堅牢な樹脂で覆います。
樹脂にはシリカなどの充填剤が含まれ、硬化後は物理的衝撃や湿度、埃から製品を守る役割を果たします。用途によっては、熱に強い特殊樹脂やセラミック封止を行う場合もあります。
モールド後は、成形品を個片に分割するセパレーション工程を経て、個々のICパッケージとして完成します。
最終検査工程での品質保証
最終検査工程では、電気的性能試験と外観検査を通じて製品の品質を保証します。
電気的性能試験では、専用のテスターを使用して、設計通りの動作を確認します。マイクロプロセッサなら論理演算の正確性、メモリICなら全アドレスへのアクセス、アナログICなら電圧・電流特性などを高速でテストします。
高信頼性が要求される製品では、バーンイン試験や耐環境試験も実施され、初期不良の排除と長期信頼性の確保が図られます。
外観検査では、パッケージの傷やヒビ、リード端子の曲がり、マーキングの正確性などをチェックします。近年は画像処理装置による自動検査が進んでいます。
検査結果のデータは詳細に蓄積され、工程全体へのフィードバックに活用されます。特定ロットで歩留まりが低下した場合は、前工程まで遡って原因分析を行い、継続的な改善につなげています。
半導体組立の年収相場と雇用形態別の待遇
半導体組立の仕事における収入は、雇用形態によって大きく異なります。正社員として安定的なキャリアを築くか、派遣・契約社員として柔軟に働くか、それぞれにメリットとデメリットがあります。
正社員の年収水準と昇進の可能性
半導体メーカーの正社員として組立工程に従事する場合、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、製造職社員の平均年収は約428.7万円(平均年齢43.5歳)とされています。
新卒・未経験での入社時は月収20万円台前半が一般的で、年収ベースでは300~350万円程度からスタートします。勤続年数の増加とともに昇給し、20代後半から30代で年収400~500万円に到達する例が多く見られます。
業績好調な大手メーカーでは、賞与が年5~6ヶ月分支給されることもあり、基本給以上に総年収が押し上げられるケースもあります。
製造オペレーターからリーダー職や監督者へ昇進すれば、役職手当により年収が数十万円から100万円程度上乗せされます。さらに設備保全や品質管理部門への異動、技術職への転換により、年収600~700万円台も視野に入ってきます。
管理職まで昇進すれば、年収1000万円超えも現実的な目標となります。大企業では定期昇給や退職金制度、充実した福利厚生も整備されており、生涯所得の観点から安定性の高い選択肢といえるでしょう。
派遣・契約社員の時給相場
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、半導体製造における時給は、一般労働者で2,102円(残業代・賞与を含む)、短時間労働者で1,194円となっています。
半導体製造の就業形態では、正規職員・従業員が82.6%と高い割合を占めていますが、派遣社員も21.7%、契約社員・期間従業員が10.9%存在しています。
交替制勤務の場合、深夜労働には法定で基本給の25%以上の割増賃金が支払われるため、夜勤を含むシフトでは収入が増加する傾向があります。
また、令和6年度のハローワーク求人統計データによると、求人賃金(月額)は全国平均で22.8万円となっています。
福利厚生と将来的なキャリアパス
正社員の福利厚生は充実しており、社会保険完備はもちろん、企業年金、退職金、住宅手当、家族手当、食事補助など、企業独自の制度が整っています。地方工場では独身寮や社宅を格安で提供するケースも多く見られます。
派遣社員は派遣会社の福利厚生が適用され、社会保険加入や有給休暇取得は可能ですが、賞与や退職金は基本的にありません。期間従業員は満了慰労金や寮提供など、短期集中型の福利厚生が用意されています。
キャリアパスとして、正社員は社内での昇進や部門異動の道が開かれています。半導体製品製造技能士(2級・1級・特級)や機械保全技能士などの資格取得により、専門性を高めることも可能です。
派遣・契約社員は正社員登用を目指すケースが一般的で、紹介予定派遣や登用試験を通じて正社員への道が開かれています。半導体製造の経験は他の精密機器組立や電子部品工場でも評価され、転職市場での強みとなります。
半導体組立に向いている人の5つの特徴
半導体組立の仕事には特定の適性が求められます。以下の5つの特徴を持つ人は、この仕事で活躍できる可能性が高いでしょう。
細かい作業が得意で手先の器用さを活かせる人
半導体組立で扱う部品は極めて小さく、ICチップは数ミリ角、ボンディングワイヤは髪の毛の4分の1程度の細さです。自動化が進んでいても、顕微鏡での良否判定やピンセットでの部品補充など、細かな作業は避けられません。
手先の器用さに自信がある人、プラモデル作りや手芸など細かい作業を楽しめる人は、この仕事の適性が高いといえます。
慎重で細やかな作業を苦にせず、数ミリのズレも許さない精密さに喜びを感じられる人なら、半導体組立の現場で力を発揮できるでしょう。
単調な作業でも集中力を維持できる人
半導体組立では、同じ作業の繰り返しが長時間続きます。工程ごとに担当が固定され、決められた操作とチェックを延々と続ける必要があります。
単調なルーティン作業でも集中力を切らさず、コツコツと取り組める忍耐力と持続力が求められます。
検査工程では何百個ものチップを順に確認する作業が続きますが、気を抜けば不良を見逃し、後工程や製品品質に重大な影響を与えかねません。
企業側も休憩タイミングの工夫や作業ローテーションなどで配慮していますが、基本的に単調な反復作業を苦痛に感じない気質の人が向いています。
責任感が強く品質への意識が高い人
半導体製品の不良は、エンドユーザーの機器故障や大きな損害につながる可能性があります。組立工程は不良の芽を摘む最後の砦として、高い品質意識が求められます。
与えられた役割に責任を持ち、決していい加減な作業をしない責任感の強さが必要です。検査での見落としは後のクレームや損失につながるため、「異常を見逃さない」という強い意識が不可欠です。
ミクロン単位の精度が要求される世界で、常に品質第一の姿勢を貫き、工程記録を正確につけ、異常があれば即座に報告する真面目さが求められます。
自分たちの仕事が世界中の電子機器の信頼性を支えているという誇りを持てる人は、この仕事で大きなやりがいを感じられるでしょう。
規則やマニュアルを守れる几帳面な人
半導体工場では細かな規則や手順が数多く定められており、それらを厳格に守ることが絶対条件です。
クリーンルーム入室手順から製造オペレーションまで、すべてに標準作業手順書が存在し、その遵守が品質と安全を確保します。
几帳面な人にとっては「決められた通りにやれば良い」という明確な指針があることで、かえって働きやすい環境といえます。
大雑把な人や自己流でやりたがる人には向きませんが、真面目でルール厳守できる人は、チームから信頼され、半導体組立の現場で重宝される存在となります。
ものづくりへの情熱と交替勤務への適応力がある人
半導体組立は、スマートフォンや自動車、家電など、様々な最終製品を支える重要な仕事です。自分が関わった製品が世の中で役立っているという実感は、大きなモチベーションとなります。
工作や機械いじりが好きな人、ものづくりに興味がある人なら、「縁の下の力持ち」として社会を支える誇りを感じられるでしょう。
同時に、交替制勤務への適応力も重要です。夜勤を含む不規則な生活リズムに対応し、体調管理を上手に行える人が向いています。
平日休みや連続休暇などのメリットを前向きに活用し、柔軟な姿勢で勤務形態に合わせられる人は、半導体組立の現場で長く活躍できるでしょう。
半導体組立は日本のものづくりを支える誇りある仕事
半導体組立は、一見すると地道な工場作業の積み重ねですが、その一つひとつが高性能で信頼性の高い半導体製品を生み出し、現代社会の根幹を支えています。日本の現場力や品質意識は世界に誇れる強みであり、今後の先端パッケージング技術においても重要な役割を果たしていくでしょう。待遇面でも安定した収入とキャリアパスが期待でき、クリーンな職場環境で最新設備に囲まれて働ける魅力があります。何より、自分たちの仕事が世界中の技術進歩を支えているという誇りは、かけがえのない財産となるはずです。
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